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STEAM教育はなぜ大切?

絵画教室
科学授業の子供たち

Q. STEAM教育って?

STEAMのSはScience、TはTechnology、EはEngineering、AはArts、MはMath。この時、サイエンス、アーツとマスはわかっても、テクノロジーとエンジニアリングの分野の違いにパッとこないかもしれませんが、テクノロジーはどちらかというとIT技術、エンジニアリングは工学的な技術です。そして、アートは建築、絵画、彫刻のようなビジュアルアートだけでなく、演劇、音楽という包括的な芸術を指しています。2000年初め頃、ここからArtsを除いたSTEM教育が教育界で提唱されましたが、ここにArtsを加えSTEAMにすることで21世紀に活躍する人材が育っていくと考えられています。

理想としては、このカテゴリーの中で共通する内容をジャンルまたは科目を超えて一緒に教えていくことですが、現在の日本教育においてほとんどの学校では時間割を見てもわかるように科目別に教えられています。

一昔前、若者の理系離れが懸念されたり、大学部文系卒業者の就職困難が懸念されたり、果たして理系が良いのか?文系が良いのか?なんて考える学生も少なくないかもしれません。私が力を入れているのは幼児教育ですが、できることなら小さい頃からジャンルを超えて学び、学びの中から楽しさ、発見するワクワクを体感して欲しいと思っています。

Q.子供たちにとってSTEAM教育が大切な理由?

美術史専攻だった私にとってSTEAMの代表的な例として、レオナルド・ダ・ヴィンチやブルネレスキ、ミケランジェロが頭に浮かびます。レオナルドは医学、天文学、光学と幅広い分野で重要な発見をし、さらには芸術作品を残しています。ブルネレスキは遠近法を生み出し、建築家としてだけでなく彫刻家としても活躍しました。ミケランジェロも建築家、技術者でもありました。彼らの活躍が示すのは文系にも理系にも境界がないということです。つまりは、分野が重なり合いその中から独創的なアイディアが生まれていたのです。

STEAM教育の利点は大きく分けて2つあると思います。

まず1つ目、幅広い視野で学ぶことの意義は好き嫌い、得意不得意という意識を減らすことだと思います。簡単に言えば、理科はきらいだけど絵画で宇宙空間を表現した時、自分は意外に宇宙についてもっと知ってみたいなというきっかけになるかもしれません。与えられた環境の中であらゆる経験をすることが「これってなんだろう?」「こうしたらどうなるだろう?」という新しい切り口で物事を読み解いていくはずです。また新しい発見をしたときの「アハ体験」を繰り返していくことにより、後で述べるデザイン思考が鍛えられます。

2つ目に、1つの分野での学びが他の分野の能力を高めることがあるからです。例えば、よく聞くのはビジュアル・アーツ領域の訓練は空間的な知覚能力の発達や、科学の観察力、洞察力を向上されると指摘されます。また、音楽と数学の関係も注目され、ハーバード大学の研究では高度な音楽教育を受けた子供たちの方が幾何学的特性を見分けたり、平面的な形状を空間で再現する能力で高い点数を得ているとも発表されました。

結果としてこれからの超スマート社会で必要とされるであろう人材育成にはぴったりの教育概念だと言えると思います。

​森下 絵美子

参考文献:

ヤング吉原麻里子、木島里江「世界を変えるSTEAM人材」朝日新聞出版、2019年

瀧本哲史「ミライの授業」講談社、2016年

デビッド・A・スーザ、トム・ピレッキ「AI時代を生きる子どものためのSTEAM教育」幻冬舎、2017年

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