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STEAM教育とこれからの人材

ビジネスミーティング
ロボット

今回のコロナ禍でより明らかになったことがあります。前例のない私たちが直面する環境の中で、「より良い社会にするため」「より便利に機能するため」に人間には何ができるのかということです。例えば、身近なことで言えば、フェイスシールドが足りなかった時、何を応用して同様のものが作れるのか、移動式簡易手洗所を作る、会社に行かずVRで会社訪問する方法を考え実現させてきています。

 

まさにVUCA(Volatility:変動性、Uncertanity:不確実性、Complexity:複雑、Ambiguity:不明確さ)と言われる時代ではクライアントや消費者のニーズを基盤にアイディアやものづくりを創出するデザイン思考が大切なのです。この時にサイエンス、テクノロジー、アートのようにジャンルをきっちり分けて考えていては小さなアイディアしか創出されないでしょう。だからこそ幼少期から大きな視野で物事をとらえる必要があるのです。

 

ビジネス理論でも、何のために作るのか?(Why)どうやって作るのか?(How) 何を作るのか?(What) のWhyが一番大切だと言われています。AIやテクノロジーの力ではなく人間の有用性によって理念が生まれます。同時に、政府は狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続き、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた超スマート社会(Society5.0)を提唱しています。超スマート社会ではAIやロボットのような先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れつつ、誰もが快適で質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会を目指しています。つまりテクノロジーと人間の共存社会です。ここまで聞くとテクノロジーやエンジニアリングが重要視されていると思われがちですが、STEAM教育の重要性の記事で、批判的思考とは様々な切り口から課題や状況を見極め、分析すること故にその思考を訓練することが大切と述べました。あらゆる経験や価値観の中で、どうしたらより便利になるのか、より良いものが作り出せるのかというのは、まず、この批判的思考による状況の見極めがあってこそです。結果、STEAM教育が必要なのです。

 

そして思考のプロセスが正しいかの確認する能力である論理能力、また新しい物を生み出すデザイン思考を組み合わせてイノベーションが起こせるのです。Why/How/Whatを模索するプロセスには脳や五感を使った直感が大きな影響を与えます。そしてこのプロセスの中で気づきとひらめきの「アハ体験」を繰り返していくのです。

 

芸術は右脳を鍛えると一般的に知られています。革新を起こすプロセスでは創造的な右脳が必要とされ、右脳を鍛えるために芸術が不可欠なのです。さらに言えば、起業するのも企業内で新規アイディアを生み出すのもアートと同じ一から創造するという意味では同じです。

​森下 絵美子

 

参考文献:

ヤング吉原麻里子、木島里江「世界を変えるSTEAM人材」朝日新聞出版、2019年

ニール・ヒンディ「世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること」クロスメディアパブリッシング、2018年

「Scoiety5.0」内閣府、https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

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